平成29年度 公害防止管理者 大規模大気特論 問8を解説|セメント原料そのものが脱硫剤になる
平成29年度 大規模大気特論 問8は、セメントをつくる工程で出る硫黄酸化物への対策を説明した文について、ア~ウに入る語句の正しい組合せを選ぶ問題です。
この問題のポイント
セメントの窯では、専用の排煙脱硫装置を付けなくても硫黄酸化物がほとんど出てきません。理由は単純で、原料そのものが脱硫剤として働くからです。問われているのは、その反応が起きる場所の温度、反応相手になる原料の名前、そして取り除ける割合の三点。分かれ目は、反応の場を下流の低温側と読み違えないことと、酸性のガスを捕らえられるのはどちらの原料かを見分けることです。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)
空欄に入る正しい語句
| 空欄 | 語句 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | 400~1000℃ | プレヒータは窯へ入る前の原料を排ガスの熱で予熱する装置です。窯に近い側ほど高温で、反応が進むのはこの高温域です。 |
| イ | 石灰石 | セメント原料の主成分です。熱を受けて生じる酸化カルシウムが、酸性のガスである二酸化硫黄と結びついて固定します。 |
| ウ | 97~99 | 原料の粉と排ガスが大量に接触するため、取り除かれる割合はきわめて高くなります。 |
ここが分かれ目
いちばん効くのは空欄イです。二酸化硫黄は酸性のガスなので、これを捕まえられるのは塩基性の物質だけです。石灰石は加熱されて酸化カルシウムになり、二酸化硫黄と反応してカルシウムの硫黄化合物として固定します。ここに二酸化けい素を当てはめる選択肢がありますが、二酸化けい素はそれ自体が酸性の酸化物で、酸性のガスを引き寄せる働きを持ちません。原料に含まれてはいても、脱硫の主役にはなり得ないという点で切り分けられます。
次に効くのが空欄アです。プレヒータは窯の排ガスの熱を使って原料粉をあらかじめ温める多段の装置で、窯に近い側は高温になります。低い温度域を答えにすると、集じん装置や煙突に近い下流側の温度帯を指してしまい、反応が起きている場所とずれます。固体と気体の反応が実用的な速さで進むには、それなりの高温が要るという感覚も助けになります。
空欄ウは、いま述べた条件から自然に決まります。窯へ送られる原料は膨大な量で、それが排ガスと向かい合って流れながら接触します。反応の相手が尽きることがないので、専用の脱硫装置を付けた場合に匹敵する高い割合まで取り除かれます。低めの割合を答えにすると、セメント工場に排煙脱硫装置が並んでいない現実と食い違います。
覚え方
- セメント窯は原料の石灰石そのものが脱硫剤。装置を足さずに脱硫される。
- 酸性のガスを捕るのは塩基性の物質。けい酸系の酸化物では捕れない。
- 反応の場はプレヒータの高温域。集じん出口側の低温域ではない。
- 原料と排ガスの接触量が桁違いなので、取り除かれる割合は97~99%程度と非常に高い。
理解度チェック
セメント工場に排煙脱硫装置がほとんど置かれていないのはなぜですか。
原料に含まれる石灰石が脱硫剤として働き、プレヒータの高温域で二酸化硫黄を取り込んでしまうからです。専用装置を付けた場合に匹敵する割合まで取り除かれます。
二酸化けい素では二酸化硫黄を取り込めないのはなぜですか。
二酸化硫黄が酸性のガスであるのに対し、二酸化けい素も酸性の酸化物だからです。酸性どうしでは中和の反応が起きず、固定できません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模大気特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月