平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問9を解説|白水からの原料回収は浮上分離
平成29年度 大規模水質特論 問9は、紙をつくる工場で水の汚れをどう抑えているかを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
紙は、繊維と鉱物の粉を水に浮かべた液を網ですくい、水を抜いて薄い層に仕上げる製品です。ですから網の下からは大量の水が落ち、その中には網目をすり抜けた細かい繊維と粉が混じっています。これが白水と呼ばれる水で、工場はこれを捨てずに回します。ここで決定的なのは、回収したものを何に使うかです。もう一度紙の原料として使うなら、薬品を混ぜて塊にしてしまってはいけません。品質に響くからです。一方、最後に川へ出す前の仕上げでは、捨てる前提なので薬品で固めて沈めます。設問はこの二つの場面を並べており、引っかけの核心は製品へ戻す側の工程に、捨てる側の手段を持ち込んだ肢にあります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 手段が違います。気泡で浮かせて回収するのであって、薬品で固めて沈めるのではありません。 |
| (2) | ○(正しい) | 網の下に落ちた水を工程内で何度も回すことが、取水量を抑える最大の柱です。 |
| (3) | ○(正しい) | 塩素ガスを使わない漂白へ切り替えたことで、塩素を含む有機物の生成が抑えられました。 |
| (4) | ○(正しい) | この業種で管理する対象は、有機物の指標と、細かい繊維や粉に由来する浮遊物です。 |
| (5) | ○(正しい) | 微生物で有機物を分解し、そのあと薬品で粒と色を沈める二段構えが一般的です。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
白水から原料を取り戻す装置は、細かい気泡を水に送り込み、繊維や粉の粒に気泡をくっつけて水面へ持ち上げ、浮いてきたものをかき取る仕組みです。持ち上げるだけなので、回収したものはほぐせばそのまま紙料として使えます。ここに凝集剤を加えたらどうなるか。粒どうしが薬品でがっちり結び付き、繊維の一本一本がばらけない塊になってしまいます。紙の強度も見た目も、繊維が均一にほぐれて絡み合うことで決まります。薬品で固めた塊を混ぜれば、斑や強度低下の原因になります。しかも薬品そのものが製品に混入します。
もう一つ、水の側の事情もあります。この装置を出た水は、工程のシャワーなどにもう一度使われます。凝集剤を入れれば、その残りが循環する水に持ち込まれ、系の中をぐるぐる回って蓄積します。網や配管を汚し、紙料の状態を不安定にする原因になりかねません。回して使う水に、余計なものを入れない方がよいのは当然です。
では凝集剤はどこで使うのか。最終的に系の外へ出す水を仕上げる段、つまり生物処理のあとの沈めて捨てる工程です。ここで取り出したものは製品に戻さず汚泥として処分するので、薬品で固めて構いません。回収して使うなら浮かせて持ち上げる、捨てるなら固めて沈める。この対応を押さえておけば、装置名を暗記しなくても肢の適否が判断できます。同じ考え方は、食品工場で歩留まりを上げる回収工程と、最終放流前の処理工程を区別するときにもそのまま使えます。
覚え方
- 戻すなら浮かせる、捨てるなら固めて沈める。手段は行き先で決まる。
- 網の下に落ちる水を工程内で回すことが、この業種の節水の柱。
- 回収物に薬品を入れない理由は二つ。製品の品質と循環水への蓄積。
- 凝集剤の出番は最終放流の手前。生物処理のあとに粒と色を落とす。
- 塩素ガスを使わない漂白へ切り替えると、塩素を含む有機物の生成が抑えられる。
理解度チェック
白水から繊維と粉を取り戻す装置では、どんな原理で固形分を分けますか。
気泡による浮上分離です。細かい気泡を粒に付着させて水面へ持ち上げ、浮いた層をかき取ります。薬品で固めないので、回収した繊維と粉はそのまま紙の原料として使えます。
回収工程で凝集剤を使わないのはなぜですか。
繊維が塊になって製品の品質を損なううえ、薬品の残りが循環する水に蓄積するためです。凝集剤を使うのは、汚泥として処分する前提の最終処理の段です。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月