平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問10を解説|放流先が変われば求める水質も変わる
平成29年度 大規模水質特論 問10は、飲みものをつくる工場から出る水の性質と、その処理の組み方を問う正誤問題です。最も不適切なものを選びます。
この問題のポイント
この業種の排水は、有害物質をほとんど含まず、代わりに微生物がよろこんで食べる有機物が濃く入っているのが特徴です。仕込みや発酵の工程からは糖やアルコール由来の成分が、容器を洗う工程からは洗剤を含む水が出ます。だから処理の中心は生物処理で、濃い部分には酸素を使わない方式を前段に置き、そこで大部分を落としてから通常の生物処理へ渡す組み方が使われます。運転上の悩みは、仕込みの時間帯や季節によって濃度も水量も大きく振れることで、それをならす工夫も選択肢に並びます。引っかけの核心は一点で、どこへ放流するかによって、どこまで処理すべきかが変わるという原則を逆に書いた肢があります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(不適切な記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(適切) | 仕込みや発酵の系と、容器を洗う系をまとめて一本の処理設備へ導く構成が一般的です。 |
| (2) | ○(適切) | 濃い有機物を酸素なしで分解する装置を前段に置き、負担を軽くしてから曝気へ渡します。 |
| (3) | ×(不適切) | 下水道へ渡す水に仕上げの高度処理まで積む必要はありません。この先で処理されます。 |
| (4) | ○(適切) | 原料と洗浄由来なので、含まれる有機物は糖の仲間と有機酸が中心になります。 |
| (5) | ○(適切) | 水量も濃度も振れるため、長くとどめて平準化する広い池を使う例があります。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
工場の水をどこまできれいにするかは、性能の自慢ではなく放流先が何を求めているかで決まります。川や海へ直接出すなら、そこで最終処分になるので、排水基準を満たす水質まで自前で仕上げなければなりません。ところが下水道へ渡す場合、その水は終末処理場へ集められ、そこで改めて処理されます。工場に求められるのは、下水道の施設を傷めないこと、処理を妨げないこと、そして働く人の安全を損なわないことです。下水道へ渡す前提の水に、粒や色を落とす仕上げの工程まで積むのは、同じ処理を二度払うことにほかなりません。
むしろこの業種で下水道放流を選ぶときに重要なのは、逆方向の配慮です。有機物が濃いまま大量に流せば下水道の負担が跳ね上がるので、濃い部分を前段の生物処理で落としてから渡すという設計になります。実際、酸素を使わない処理を前に置く狙いには、汚泥の発生を抑えることや発生する気体を燃料として使えることに加えて、下水道へ渡す前に負荷を減らすという意味もあります。求められているのは「深く磨くこと」ではなく「重い負荷を渡さないこと」です。
この原則は業種を問わず使えます。粒や色、りんまで落とす仕上げの工程が必要になるのは、公共用水域へ直接出す場合や、処理水を工場内でもう一度使う場合です。設問で処理フローの適否を問われたら、まず放流先を確認してください。放流先を見ずにフローの長さだけで判断すると、この肢のように「丁寧そうに見えて実は過剰」という記述に引っかかります。
覚え方
- 処理の深さは放流先で決まる。下水道へ渡すなら仕上げの高度処理は要らない。
- 下水道が求めるのは施設を傷めない・処理を妨げないこと。磨き上げることではない。
- 粒・色・りんまで落とすのは、直接放流か再利用のとき。
- 濃い有機物は酸素を使わない処理を前段に。汚泥が少なく、気体を燃料に使える。
- 水量と濃度が振れる排水は、長くとどめてならすのが基本の対処。
理解度チェック
処理した水を下水道へ渡す場合、工場側にはどこまでの処理が求められますか。
下水道の施設を傷めず、終末処理場の処理を妨げない水質までです。その先で改めて処理し直されるため、粒や色を落とす仕上げの工程まで自前で積む必要はありません。
濃い有機物を含む排水で、酸素を使わない処理を前段に置く利点を挙げてください。
曝気の動力が要らず、発生する汚泥が少なく、生じる気体を燃料として使える点です。ここで大部分の有機物を落としておけば、後段の生物処理や下水道への負担も軽くなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月