平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問8を解説|重力で浮かせるだけでは油は落としきれない
平成29年度 大規模水質特論 問8は、原油を精製する工場から出るさまざまな水を、どこでどう処理するかを問う正誤問題です。最も不適切なものを選びます。
この問題のポイント
この工場の水は、性質の違いによって系統が分けられています。工程から出る水、原油タンクの底にたまる水、そして雨水。雨水はさらに、油に触れる可能性がある区画のものと、そうでないものに分けられます。汚れる可能性のある水だけを処理側へ回し、そうでない水は素通りさせるという設計思想を読み取れるかが一つ目の軸です。二つ目の軸は、装置ごとの守備範囲です。油を分ける装置にも段階があり、大きな油の粒を浮かせて回収する段と、細かく乳化した油を落とす段と、溶けた有機物を微生物に食べさせる段では、到達できる濃度がまるで違います。引っかけの核心は一点で、最初の段だけで最終的な水準まで到達すると言い切っているところにあります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(不適切な記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(不適切) | 重力で浮かせる段は大きな油の粒を回収する装置で、ここだけでその水準までは落ちません。 |
| (2) | ○(適切) | 油に触れる区画の雨水だけを処理へ回し、それ以外は貯留池を通して流す設計です。 |
| (3) | ○(適切) | 硫化水素は蒸気で追い出したうえで、硫黄という製品の形で取り戻せます。 |
| (4) | ○(適切) | 原油に混じった水は静置中に底へたまるので、抜き出したうえで油を分けて回収します。 |
| (5) | ○(適切) | 水に溶けたフェノールを浮かせても沈めても取れず、微生物に分解させるのが定石です。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
重力で油を分ける装置は、水より軽いという性質だけを使って油を浮かび上がらせ、表面をかき集めて回収する仕組みです。粒が大きければ浮き上がる速さも大きいので、短い滞留時間でも十分に回収できます。ところが粒が細かくなるほど浮き上がる速さは急激に落ち、水の流れに乗ったまま出口へ抜けてしまいます。重力だけを頼りにする装置には、原理上どうしても取り残す粒径があります。さらに厄介なのが、界面活性剤の作用で乳化した油です。これは微細な粒として水中に安定して分散しており、いくら静置しても浮いてきません。水に溶け込んだ油分にいたっては、浮上という現象そのものが起きません。
ですから、この段の役割は「仕上げ」ではなく「大量の遊離した油を先に回収し、後段の負担を減らす」ことにあります。実際の系統では、この後に細かい気泡を吹き込んで微細な油を持ち上げる工程が続き、さらに溶けた有機物を微生物に食べさせる工程が続きます。必要ならその後に凝集や吸着が加わります。最終的に低い濃度まで届くのは、これらを直列につないだ結果であって、最初の一段の性能ではありません。
試験でこの型の肢を見抜くコツは、「装置名」と「到達濃度」の組合せが不自然に飛んでいないかを疑うことです。単純な原理の装置に、高度な処理でしか届かない水準が結び付けられていたら、まずそこが誤りです。逆に、溶けている成分を沈殿や浮上で取ると書いてあれば、それも原理から外れています。原理でできることと、要求される水準を突き合わせるという読み方は、業種を変えても通用します。
覚え方
- 重力で分ける段は大きな油を集める前処理。仕上げの装置ではない。
- 油の三段構え。浮かせて回収 → 気泡で微細油を上げる → 溶けた分は微生物へ。
- 乳化した油と溶けた油は、静置しても浮いてこない。原理が違う。
- 雨水は二系統。油に触れる区画だけを処理へ回す。
- 装置名と到達濃度の組合せが飛んでいたら誤り、と疑う。
理解度チェック
重力で油を分ける装置のあとに、気泡を使う工程を置くのはなぜですか。
重力だけでは細かい油の粒や乳化した油が浮き上がらないためです。微細な気泡を油粒に付着させて見かけの比重を下げ、強制的に浮かせることで、重力分離では抜けてしまう油を回収します。
溶けたフェノールを除くのは、どの工程ですか。
活性汚泥による生物処理です。溶けている以上は浮上でも沈殿でも取れないため、微生物に分解させます。残りをさらに落とす必要があれば、活性炭吸着などを後段に加えます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月