平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問7を解説|安水のBODの主役はフェノール類
平成29年度 大規模水質特論 問7は、製鉄所で石炭を蒸し焼きにする工程から出る排水の処理の流れを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
この排水は現場で安水と呼ばれ、石炭に含まれていた水分と、冷却のために吹き込んだ水がまとまったものです。もとが石炭であることを忘れなければ、中身の顔ぶれは自然に想像がつきます。石炭を高温で分解すると、ベンゼン環に水酸基がついた化合物、タール分、アンモニア、シアン化合物、チオシアン酸塩などが生まれ、これらが凝縮した水に溶け込みます。処理の順序も、この顔ぶれから素直に決まります。まず生物処理を邪魔する成分を物理・化学の手で先に落とし、そのうえで微生物に食べさせ、最後に残った色や粒を薬品で沈めます。引っかけの核心は一点で、微生物が食べる有機物の主役を言い当てられるかです。食品工場の排水と同じ感覚で答えると外します。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 高温のガスを水で急冷すると水分が凝縮し、ガス中の成分を溶かし込んで排水になります。 |
| (2) | ○(正しい) | 微生物に有害な成分を蒸気で追い出してから生物処理へ渡す、という順序が守られています。 |
| (3) | ○(正しい) | タール状の油分は微生物処理の妨げになるため、粒を詰めた層に通して先に捕らえます。 |
| (4) | ×(誤り) | 主役が違います。分解されるのはフェノール類などの芳香族化合物で、有機酸ではありません。 |
| (5) | ○(正しい) | 生物処理で取り切れない粒・色・りんは、薬品で固めて沈める工程で仕上げます。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
有機酸とは酢酸や乳酸のような、発酵で生まれる小さな分子のことです。これらが主役になるのは、糖やでんぷんを扱う工場の排水や、嫌気性の処理を前段に置いた系です。石炭を蒸し焼きにした工程からは、そうした発酵由来の分子は主成分になりません。ここで生物処理の対象になるのは、フェノールやクレゾールといったベンゼン環をもつ化合物です。曝気槽の微生物は、これらを環ごと開いて分解していきます。あわせて、蒸気で追い出しきれずに残ったアンモニアやシアン、チオシアン酸塩も、なじんだ汚泥であれば処理できます。
この違いは運転の難しさに直結します。有機酸は誰でも食べられる易分解性の餌ですが、環をもつ化合物を分解できる菌は限られており、濃度が急に変わると簡単に死んでしまいます。だから、この排水の生物処理では流入濃度を平準化する調整槽が要り、汚泥を長く育てて菌相を安定させることが管理の要点になります。前段で油分やアンモニアを落としきれないと、曝気槽の菌が痛んで一気に処理が破綻します。前処理が丁寧に組まれている理由はここにあります。
覚え方としては、排水の中身は原料をたどれば分かるという一点に尽きます。石炭ならフェノール類とタールとアンモニア、糖やでんぷんを扱う工場なら糖と有機酸、石油精製ならフェノールと油分と硫化物、という具合です。設問が業種を名指ししている以上、その業種の原料まで戻って考えるのが最短ルートになります。
覚え方
- 石炭由来の排水はフェノール類・タール・アンモニア・シアン。有機酸が主役なのは発酵系。
- 処理の順序は邪魔者を先に落とす → 微生物に食べさせる → 薬品で仕上げる。
- 蒸気で追い出す工程と油分を捕らえる工程は、どちらも生物処理を守るための前処理。
- 環をもつ化合物を分解する菌はもろい。濃度変動を抑える調整が管理の要。
- 排水の中身に迷ったら原料までさかのぼる。業種名は最大のヒント。
理解度チェック
石炭を蒸し焼きにする工程の排水で、生物処理の主な対象となる有機物は何ですか。
フェノールやクレゾールなど、ベンゼン環をもつ化合物です。あわせて残留するアンモニアやシアン、チオシアン酸塩も処理されます。発酵由来の有機酸が主役になるのは、糖やでんぷんを扱う工場の排水です。
生物処理へ渡す前に、蒸気で成分を追い出す工程を置くのはなぜですか。
アンモニアやシアンが高い濃度で残っていると曝気槽の微生物が働けなくなるためです。生物処理を守る前処理として、先に濃度を落としてから渡します。油分を捕らえる工程も同じ狙いです。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月