平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問5を解説|蒸発した水は塩を置いていく
平成29年度 大規模水質特論 問5は、冷却塔を回している水系で、水にとけた塩分が何倍まで濃くなっているかを求める計算問題です。正しい値を選びます。
この問題のポイント
与えられているのは、系から失われていく水の三つの経路です。冷却塔で気体になって出ていく分、水滴のまま風に飛ばされて出ていく分、そして意図的に抜き出して捨てる分。これらは全部足した量だけ新しい水を補わないと、水位が保てません。ここまでは水の勘定です。この問題の勝負どころは、続けて塩の勘定に切り替えられるかにあります。補給する水には必ず塩が溶けていて、それが系に入ってきます。では出ていくのはどこからか。気体になって出ていく水は塩を連れていけません。塩を系の外へ運び出せるのは、水を液体のまま持ち出す経路だけです。この一点を押さえれば、割り算ひとつで答えが出ます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(2.0)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | × | 1.5。補う水の量を数えるときに一つの経路を数え落とすと、この付近の値になります。 |
| (2) | ○ | 2.0。補う水の量を、塩を連れ出す二つの経路の合計で割った値と一致します。 |
| (3) | × | 2.5。気体になる分を水滴で飛ぶ分で割るなど、分子と分母を取り違えると出てくる値です。 |
| (4) | × | 3.0。分母から水滴で飛ぶ分を落とすと3を超える値になり、この付近に迷い込みます。 |
| (5) | × | 3.5。同じく分母を抜き出し分だけにした場合に近づく値で、塩の収支を取り違えています。 |
計算の手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 | 系から失われる水をすべて足して、補わなければならない量を出します。気体になる分・水滴で飛ぶ分・抜き出す分の三つを合計すると、循環している水量に対して2.0 %です。 |
| 手順2 | 塩を系の外へ持ち出せる経路だけを選び出します。気体になる分は塩を置いていくので除き、水滴で飛ぶ分と抜き出す分だけを足して1.0 %とします。 |
| 手順3 | 手順1を手順2で割ります。2.0 ÷ 1.0 で2.0となり、これが求める倍数です。 |
| 手順4 | 検算します。入ってくる塩の量は補給水の量に比例し、出ていく塩の量は持ち出し経路の水量と系内濃度の積です。両者が釣り合う濃度は補給水の2倍で、手順3と一致します。 |
ここが分かれ目
この計算でつまずく人は、ほぼ例外なく分母に気体になる分まで入れています。そうすると分子と分母が同じ量になり、答えは1、つまり「まったく濃くならない」ということになります。冷却塔は水を蒸発させて熱を奪う装置ですから、濃くならないという結論は装置の原理そのものと矛盾します。おかしな答えが出たら、まず塩の行き先を数え直すのが正しい戻り方です。
もう一つの分かれ目は、水滴のまま飛んでいく分の扱いです。これは蒸発と違い、水と一緒に塩をそのまま持ち去ります。だから抜き出し分と同じ側、つまり分母に入れます。塔から白いもやが立つのを見て蒸発と同じだと思ってしまうと、分母を小さく見積もって倍数を大きく計算してしまいます。液体のまま出るか、気体になって出るか。この一線だけで分母に入るかどうかが決まります。
式の意味が分かると、運転管理の勘どころも同時に見えてきます。抜き出す量を絞れば分母が小さくなり、倍数は上がります。水は節約できますが、系内の塩が濃くなるので、配管や熱交換器にスケールが付きやすくなり、腐食のリスクも増します。節水と設備保全は必ず引っ張り合う関係にあり、どこまで濃くしてよいかを決めるのが薬品添加を含めた水処理の役割です。倍数を上げたいなら、水の抜き方を変えるより先に、濃くなっても析出しにくい状態をつくる必要があります。
覚え方
- 倍数=補う水の量 ÷(水滴で飛ぶ分+抜き出す分)。分母に蒸発は入れない。
- 理由はただ一つ、気体になった水は塩を置いていくから。
- 補う水の量は、失われる経路をすべて足す。三つとも足すのが分子。
- 答えが1になったら分母の取り違え。冷却塔で濃くならないはずがない。
- 抜き出しを絞ると倍数は上がる。節水とスケール・腐食は裏表。
理解度チェック
水滴のまま飛んでいく分は、分子と分母のどちらに入りますか。理由も述べてください。
両方に入ります。失われる水なので補給量を数えるときには足し、しかも水と一緒に塩をそのまま持ち去るため、塩を系外へ出す経路としても数えます。気体になる分と決定的に違うのはこの点です。
抜き出す水の量を減らすと、設備にどんな影響が出ますか。
倍数が上がって系内の塩が濃くなるため、熱交換器や配管にスケールが付きやすくなり、腐食も進みやすくなります。水は節約できますが、その分だけ薬品による水処理の負担が増えます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月