平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問4を解説|CODは溶けている分だけではない
平成29年度 大規模水質特論 問4は、湾や河口の水質を計算で予測する生態系モデルのしくみを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
この種のモデルは、水の動きを解く部分と、生き物や物質のやり取りを解く部分の二階建てになっています。土台は移流と拡散を扱う方程式で、そこに増殖・分解・沈降といった変化の項を足し込んでいく構造です。動かすためには外から与える条件が要り、川や下水から入る有機物と栄養塩の量、そして光合成の元になる日射がそれにあたります。海底から水へしみ出す量のように式では追えないものは、実際に現地で測って与えます。設問はこの枠組みを順に並べていますが、一つだけモデルが扱う量の中身を狭く言い切った肢が混ざっています。有機物の指標が何を束ねた量なのかを取り違えると、計算した値と実測値の意味がずれます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 水に流されて広がる物質を追うので、移流と拡散を書いた方程式が土台になります。 |
| (2) | ○(正しい) | 外から入る有機物・栄養塩と、光合成を支える日の当たり方が入力条件になります。 |
| (3) | ○(正しい) | 泥から水へしみ出す量は場所ごとに大きく違うため、現場で測った値を与えます。 |
| (4) | ×(誤り) | 溶けている分だけではありません。プランクトンや粒状の有機物まで含めた合計に対応します。 |
| (5) | ○(正しい) | 光合成・呼吸・分解・大気とのやり取りを組み込めば、酸素の増減も追えます。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
有機物の量をはかる指標は、実験室でどう測るかを思い出すと中身が見えてきます。試料をそのまま酸化剤で処理して測るので、ろ紙を通り抜ける溶けた分も、ろ紙の上に残る粒の分も、まとめて一つの数値になります。粒の側には、生きている植物プランクトンの細胞、動物プランクトン、そして死骸やふんに由来する有機物のかけらが含まれます。溶けている有機物だけを指すと決めつけると、湾の中でいちばん量が変動する部分をまるごと落とすことになります。
モデルの側から見ると、事情はさらにはっきりします。計算の中では、植物プランクトン、動物プランクトン、粒状の有機物、溶けた有機物が別々の箱として扱われ、それぞれ増殖・捕食・分解・沈降でやり取りしています。実測値と突き合わせるときは、これらの箱を足し合わせて一つの数値に換算します。もし溶けた分の箱だけを取り出して比べれば、計算値は実測値よりはるかに小さくなり、モデルが合っていないという誤った結論を導きます。箱の合計と測定値の中身をそろえることが、検証の前提です。
ついでに押さえておきたいのが、この指標が水域の内側で増えも減りもするという性質です。栄養塩を取り込んだプランクトンが増えれば有機物が湾の中で新しく生まれ、沈んだ有機物が分解されれば消えます。だからこそ、薄まり方だけを追う計算では足りず、増殖と分解を書き込んだモデルが必要になります。同じ理由で、酸素についても供給と消費の両方を式に入れれば動きを追えます。指標の中身を正しく束ねられるかどうかが、モデルを使う入口です。
覚え方
- 有機物の指標は溶けた分+粒の分の合計。プランクトンの体も入る。
- モデルは箱を分けて計算し、比べるときは足し戻す。中身をそろえないと検証にならない。
- 土台は移流拡散の式、そこに増殖・捕食・分解・沈降を足すのが基本構造。
- 外から与えるのは負荷量と日射。式で追えない泥からの溶出は実測で与える。
- 酸素も供給と消費を書き込めば追える。増減する量はすべて式に書けばよい。
理解度チェック
生態系モデルの計算値を実測の有機物指標と比べるとき、何に注意しますか。
モデルが分けている箱を足し合わせてから比べることです。溶けた有機物だけでなく、植物プランクトンや粒状有機物も測定値に含まれるので、溶存分だけを取り出して比較すると計算値を小さく見誤ります。
海底の泥から水へ出てくる栄養塩の量は、どうやって与えますか。
現地調査で実際に測った値を使います。泥の性質や酸素の状態によって場所ごとに大きく変わり、水の流れを解く式からは求まらないためです。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月