平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問3を解説|原点から立ち上がり上限へ漸近する曲線
平成29年度 大規模水質特論 問3は、植物プランクトンが栄養塩を取り込む速さと、まわりの栄養塩の濃さの関係を、5つのグラフの形から選ぶ問題です。最も適切な図を選びます。
この問題のポイント
グラフを見比べる前に、式の形から曲線が満たすべき条件を書き出してしまうのが最短です。分数の形をしたこの式は、分子が栄養塩の濃さそのもの、分母が半飽和定数と栄養塩の濃さの和になっています。濃さがゼロなら分子がゼロなので、曲線は必ず原点を通ります。濃さを増やせば分子も分母も増えますが、増え方は分子の方が相対的に効くため値は上がり続け、下がる区間は現れません。そして濃さを大きくしていくと分数は1に近づき、けれども1には届きません。つまり上限に張り付くように頭打ちになります。この三条件を満たす形はひとつしかありません。引っかけの核心は、途中で最大をとって下がる山型や、右上がりの直線を選んでしまうことです。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(不適切) | 上に凸の山型で、途中で頂点をとったあと下がります。増えるほど遅くなる区間が現れる時点で不可です。 |
| (2) | ×(不適切) | 下に凸の谷型で、左端が上限から始まります。栄養塩がないのに最大という時点で成り立ちません。 |
| (3) | ○(適切) | 原点から急に立ち上がり、しだいに寝てきて上限へ漸近します。三つの条件をすべて満たします。 |
| (4) | ×(不適切) | 原点を通る直線です。原点通過と単調増加は満たしますが、頭打ちになりません。 |
| (5) | ×(不適切) | 原点より右から立ち上がる山型です。原点を通らず、しかも途中から下がるので二重に外れます。 |
ここが分かれ目
この曲線が飽和する理由は、生き物の側の事情で説明できます。栄養塩を細胞の中へ運び込むのは膜にある取り込み口で、その数には限りがあります。まわりが薄いうちは、濃くすればそれだけ取り込み口に出会う機会が増えるので、速さはほぼ濃さに比例して伸びます。グラフの左端が急に立ち上がるのはこのためです。ところが濃くしていくと取り込み口が次々にふさがり、やがてほとんど空きがなくなります。こうなると、いくら外を濃くしても速さはそれ以上伸びません。上限を決めているのは外の濃さではなく、細胞が持つ処理能力そのものです。
分母に足されている半飽和定数は、この曲線の「立ち上がりの鋭さ」を決める値です。ちょうど上限の半分の速さになるときの濃さがこれにあたります。この値が小さい種類ほど、薄い環境でも上限近くまで速く取り込めるので、栄養塩が乏しい水域で優位に立ちます。逆にこの値が大きい種類は、濃い環境でこそ本領を発揮します。同じ湾でも季節によって優占する種類が入れ替わる背景には、この差があります。
選ぶときの手順はいつも同じで、まず左端を見て原点から始まっているかを確かめ、次に途中で下がっていないかを確かめ、最後に右端が上限に沿って寝ているかを見ます。山型を選んでしまう人は、光合成と光の強さの関係と混同していることが多いはずです。光が強すぎると光合成が抑えられる現象は実在しますが、栄養塩の取り込みでは起きません。同じ「増やしすぎたら」という発想を持ち込まないでください。
覚え方
- この式の曲線は原点通過・単調増加・上限へ漸近の三点セット。
- 頭打ちの理由は細胞側の取り込み口が有限だから。外を濃くしても限界は上がらない。
- 半飽和定数=上限の半分に達する濃さ。小さい種ほど薄い水域に強い。
- 山型を選ぶのは光合成と光の強さの話との混同。栄養塩では下がらない。
- グラフ選択は左端・途中・右端の順に見る。三点を順に潰せば一つに決まる。
理解度チェック
栄養塩を濃くしても取り込みの速さが頭打ちになるのはなぜですか。
細胞の膜にある取り込み口の数が限られているためです。濃くなるほど口がふさがっていき、やがて空きがなくなるので、外の濃さを上げても処理能力の上限を超えられません。
半飽和定数が小さい植物プランクトンは、どんな水域で有利ですか。
栄養塩が乏しい水域です。薄い濃度でも上限に近い速さで取り込めるため、栄養塩をめぐる競争で先に確保できます。逆にこの値が大きい種は、濃い環境で伸びます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月