1. HOME
  2. 過去問解説
  3. 大気特論
  4. 平成28年
  5. > 問9 スケーリングを防ぐ運転条件

平成28年度 公害防止管理者 大気特論 問9を解説|スケーリングを防ぐ運転条件(反応槽の滞留時間は長くとる)

平成28年度 大気特論 問9は、吸収塔酸化方式をとる湿式脱硫装置で、石こうが装置に固着するのを防ぐ手立てを並べた正誤問題です。誤っているものを選びます。

この問題のポイント

硫黄分を捕まえた液の中では、石こうが溶けられる量を超えて溶けた状態になりがちです。この状態を放っておくと、石こうは手近な固い面にしがみついて育ち、塔の内壁やノズル、ミスト除去部に岩のような層をつくります。並んだ五つの手立ては、どれも「溶けきれない分を、器の壁ではなく既にある結晶の上で育たせる」か「しがみつく足がかりをなくす」かのどちらかに属します。仕込まれているのはひとつだけ向きが逆になった運転条件で、防ぎたい状態をむしろ強める書き方になっています。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(3)(誤っている記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)○(正しい)結晶の核をあらかじめ液に混ぜておくと、育つ先が液中の粒に移り、器の面には育ちにくくなります。
(2)○(正しい)入り組んだ形と粗い面はどちらもしがみつく足がかりになるため、平滑で単純な内部にします。
(3)×(誤り)時間と過飽和の扱いが逆向きで、時間はたっぷり与えて溶けすぎの状態を解消させるのが正しい運転です。これが正解です。
(4)○(正しい)液が届かない面や流れの止まる場所は析出の起点になるため、噴きかけの配置と液量の割り当てで潰します。
(5)○(正しい)ミストを捕らえる部分は濡れと乾きを繰り返して固まりやすいので、運転を止めずに水で洗い流します。

選択肢(3)のポイント(ここが誤り)

過飽和とは、その温度で溶けられる限度を超えて溶けている、無理をした状態です。無理をしているぶん、きっかけさえあれば固体に戻ろうとします。そのきっかけになるのが、塔の内壁であり、充塡物であり、ノズルの縁です。つまり溶けすぎの度合いを高いまま維持するという運転は、固着を防ぐどころか呼び込む向きになっています。ここが唯一ひっくり返された箇所です。

正しい運転は反対で、塔の下にあるタンクに液をとどめる時間をたっぷり確保します。時間があれば、溶けすぎた分は液の中を漂う既存の粒の上に落ち着き、液そのものは限度に近いおとなしい状態まで戻ります。戻りきらないうちに液を塔へ送り返すと、その無理な分が装置の面で解消されてしまうわけです。核をあらかじめ入れておく手立てと、時間を与える手立ては、どちらも「落ち着き先を液の中に用意する」という同じ狙いの表と裏だと見ると、五つの並びが一本につながります。

固着が育つと厚みのぶん流路が狭まり、圧力損失が増え、液の当たり方も偏ります。偏れば乾いた面が生まれ、そこがまた新しい起点になるという悪循環です。だから対策は、化学の側(溶けすぎを解消させる)と物理の側(足がかりと乾きをなくす)の両輪で語られます。選択肢を読むときは、その一つが化学の側なのか物理の側なのかを仕分けたうえで、狙いと向きが揃っているかを確かめると迷いません。

覚え方

  • 固着対策の狙いは溶けすぎを液の中で解消させること。装置の面で解消させない。
  • タンクにとどめる時間は長いほうが有利。短くする側に書いた肢は疑う。
  • 核を先に入れる・時間を与える=化学の側の対策。
  • 平滑な面・単純な形・乾き面をなくす・定期的に洗う=物理の側の対策。
  • 溶けすぎの度合いは「低く抑える」が正しい向き。「高く保つ」は逆。

理解度チェック

Q.

塔の下のタンクに液をとどめる時間は、長くとるべきか短くすべきか。

長くとります。時間を与えると溶けすぎた分が液中の粒の上に落ち着き、液が落ち着いた状態に戻るためです。短くすると無理な状態のまま塔へ戻り、装置の面に固まりが育ちます。

Q.

結晶の核をあらかじめ液に混ぜておくのは、何のためか。

石こうが育つ先を液の中の粒に移すためです。落ち着き先が液中にあれば、器の壁や充塡物の表面で育つ量が減ります。

平成28年度 公害防止管理者 過去問解説 一覧へ

出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成28年度 公害防止管理者等国家試験 大気特論 問題・正解」(公式PDF