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平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問9を解説|トリクロロエチレンの除去方法(イオン交換法が効かない理由)

平成30年度 水質有害物質特論 問9は、揮発しやすい有機塩素系の溶剤を水から取り除く手段についての正誤問題です。最も不適切なものを選びます。

この問題のポイント

並んでいるのは五つの処理法の名前だけで、説明文はありません。したがって覚えるべきは各法の細かい条件ではなく、それぞれの方法がどんな相手を捕まえる仕組みなのかという一点です。四つは、水になじみにくい有機分子を相手にできる方法で共通しています。残る一つだけが、そもそも相手を電気を帯びた粒として扱うことを前提にした方法です。この問題の引っかけは、水処理の教材で頻出する有名な手法を並べておいて、「有名だから使えるはずだ」と思わせる点にあります。除去したい物質が水の中でイオンになっているのかどうかを最初に確かめれば、迷わずに答えが出ます。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(5)(最も不適切な方法)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)○(適切)水になじみにくい有機分子ほど活性炭の表面に集まりやすく、吸着による除去が成り立ちます。
(2)○(適切)強い酸化力を与えて分子そのものを壊す方法で、除去ではなく分解によって片づけられます。
(3)○(適切)水より気体側へ移りやすい性質があるため、空気を通せば水中から追い出せます。
(4)○(適切)塩素の結びついた有機物を分解できる微生物が知られており、汚染地下水の浄化に使われます。
(5)×(最も不適切)対象が電荷を持たない中性の分子なので、イオンを取り替える仕組みでは捕まえられません。

選択肢(5)のポイント(ここが最も不適切)

イオン交換法は、樹脂にあらかじめ持たせておいた交換基が、水の中の電気を帯びた粒(イオン)と席を交換することで成り立つ方法です。陽イオン交換樹脂は水素イオンやナトリウムイオンを手放して金属イオンを受け取り、陰イオン交換樹脂は水酸化物イオンや塩化物イオンを手放してほかの陰イオンを受け取ります。つまりこの方法が働くための大前提は、除去したい相手が水の中でイオンになっていることです。

ところがこの問題で扱われている有機塩素系の溶剤は、水に溶けてもプラスにもマイナスにも荷電しない中性の分子のままです。交換すべきイオンとして存在していないのですから、樹脂の交換基は反応する相手を見つけられません。結果として、水と一緒に樹脂層を素通りしてしまうことになります。イオン交換法が有効なのは、金属イオン、ふっ化物イオン、硝酸イオンのように、はじめから荷電した形で水中に存在する成分です。

残る四つは、どれも中性の有機分子を相手にできる仕組みを持っています。活性炭吸着は、水になじみにくい物質ほど水中にとどまるより固体表面にくっついたほうが安定になる、という性質を利用します。この溶剤はまさに水になじみにくい部類なので相性がよく、実際に代表的な処理法として使われます。酸化分解は、強い酸化力によって分子の結合を切り、別の物質へ変えてしまう考え方です。揮散法は、この物質が水中にとどまるより気体側へ移りたがる性質を突いたもので、空気を吹き込んで水から追い出します。ただし追い出した分は気体側に移っただけなので、排ガスをそのまま放してよいわけではなく、後段での処理が前提になります。生物分解法は、塩素の付いた有機物を分解する微生物の働きを利用するもので、地下水の浄化で採用例があります。四つが「分子のまま扱える方法」、一つだけが「イオンでなければ扱えない方法」という対比で整理しておくと確実です。

覚え方

  • イオン交換法の適用条件は相手がイオンであること。中性の分子は樹脂を素通りする。
  • イオン交換で狙うのは金属イオン・ふっ化物イオン・硝酸イオンなど、荷電した形で溶けている成分。
  • 水になじみにくい有機分子は活性炭に付きやすい。溶けにくさが吸着のしやすさにつながる。
  • 揮散は水から気体側へ移すだけ。移した先の処理まで含めて一つの方法と考える。
  • 有機物は「吸わせる・壊す・飛ばす・微生物に食わせる」の四方向で攻められる。

理解度チェック

Q.

イオン交換法が有機塩素系溶剤の除去に向かないのはなぜか。

イオン交換法は水中のイオンと樹脂の交換基が席を入れ替えることで働きます。この種の溶剤は水に溶けても電荷を持たない中性の分子のままで、交換すべきイオンとして存在しないため、樹脂に捕まらず素通りしてしまいます。

Q.

揮散法で除去する場合、注意すべき点は何か。

揮散法は水中の物質を気体側へ移し替えているだけで、その場で分解しているわけではありません。追い出した成分を含む排ガスの処理を後段に用意しておかないと、水の汚れを大気側へ移しただけになってしまいます。

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF