平成29年度 公害防止管理者 汚水処理特論 問7を解説|溶けた塩を除けるのは逆浸透と電気透析
平成29年度 汚水処理特論 問7は、四つの膜分離法のうちそれ単独で溶けた塩まで取り除けるものを選ぶ組合せ問題です。正しい組合せを選びます。
この問題のポイント
膜で水と中身を分ける方法は、ふるいの目の細かさで並べられる一群と、それとはまったく違う原理で動く一群に大別できます。前者は圧力で水を押し通し、目より大きいものを手前に残す方式で、目を細かくしていけばやがてイオンにも届きますが、途中の段階では届きません。後者は電気の力でイオンそのものを動かす方式です。分かれ目は、目の細かさが「溶けたイオン」の水準に達しているかという一点で、粒子や高分子を止める段階の膜を溶けた塩の除去に使えると考えると誤ります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)
各記号の判定
| 記号 | 溶解塩類の除去 | 読み解き |
|---|---|---|
| ア | ×(できない) | 止められるのは目に見えない濁りのもとや細菌までで、イオンは素通りします。 |
| イ | ×(できない) | 分子量で区切りを表す段階の膜で、溶けた高分子は止まってもイオンは抜けます。 |
| ウ | ○(できる) | 浸透圧を上回る圧力で水だけを押し通すため、イオンは濃い側に残されます。 |
| エ | ○(できる) | イオン交換膜を並べ、直流電圧でイオンを引き抜く方式です。 |
ここが分かれ目
圧力で駆動する膜は、粗いほうから精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透という階段で並びます。精密ろ過は微細な浮遊粒子や細菌を止める段階、限外ろ過はそれをすり抜ける溶けた高分子やコロイドを止める段階です。ここまでは水に溶けたイオンにとって膜はほとんど障害になりません。イオンを止められるのは、水分子とほとんど変わらない大きさの隙間しか持たない逆浸透の膜からで、その代わり浸透圧に打ち勝つだけの高い圧力が必要になります。粒子を止める膜と、イオンを止める膜を同じ「ろ過」の言葉でひとくくりにすると、この階段の位置を見失います。
電気透析はまったく別の原理です。陽イオンだけを通す膜と陰イオンだけを通す膜を交互に並べ、両端に直流電圧をかけると、イオンだけが膜を越えて移動します。その結果、イオンが抜けていく部屋とイオンが集まる部屋が一つおきにでき、前者が脱塩水、後者が濃縮液になります。逆浸透が水を動かしてイオンを残すのに対し、電気透析はイオンを動かして水を残す。動かす相手が正反対だと覚えると混同しません。なお、有機物のように電荷を持たない溶存物質は電気透析では動かせないため、除去の対象は塩類に限られます。
実務では、この違いが用途の違いになって表れます。回収した水をボイラーや純水として使いたいなら逆浸透、塩分だけを抜いて濃縮側を資源として回収したいなら電気透析、といった具合です。目詰まりへの弱さも共通の弱点で、どちらの方式でも手前に粗い膜やろ過を置いて、粒子や高分子をあらかじめ落としておく前処理が欠かせません。
覚え方
- イオンまで止められるのは逆浸透と電気透析だけ。ろ過系の二つは届かない。
- 圧力駆動の膜は粗い順に精密ろ過・限外ろ過・ナノろ過・逆浸透。細かいほど高圧。
- 逆浸透は「水を通してイオンを残す」、電気透析は「イオンを抜いて水を残す」。
- 電気透析が動かせるのは電荷を持つものだけ。中性の有機物は残る。
- どちらも目詰まりに弱い。手前に粗い膜を置く前処理が前提。
理解度チェック
精密ろ過法や限外ろ過法では、なぜ溶けた塩を除けないのですか。
これらの膜の隙間がイオンよりはるかに大きいためです。精密ろ過は微細な粒子や細菌、限外ろ過は溶けた高分子やコロイドを止める段階にあり、水に溶けたイオンは膜を素通りします。イオンを止めるには、水分子と大差ない隙間しか持たない逆浸透の膜が必要です。
逆浸透法と電気透析法は、脱塩の原理がどう違いますか。
逆浸透法は浸透圧を上回る圧力で水だけを膜の向こうへ押し出し、イオンを濃い側に残します。電気透析法はイオン交換膜を交互に並べ、直流電圧でイオンだけを移動させ、脱塩室と濃縮室を一つおきに作ります。動かす相手が水かイオンかで正反対です。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 汚水処理特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月