平成30年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問3を解説|光は水深とともに指数関数的に減衰する
平成30年度 大規模水質特論 問3は、水域のモデルの中で藻類がどれだけ速く増えるかを見積もる手順についての正誤問題です。最も不適切なものを選びます。
この問題のポイント
藻類の増え方は、水温・光・栄養塩という三つの条件で決まります。計算の骨組みは、まず水温だけで決まる上限の速さを置き、そこに光の効き具合と栄養塩の効き具合を割合として掛けていく、という形です。設問はこの骨組みを構成要素ごとに分解して並べており、四つは骨組みどおりの説明です。引っかけの核心はある法則の名前を挙げながら、その法則が示す内容と正反対の結論をつないでいるところにあります。名前だけを見て見過ごさず、その法則が何を主張しているのかまで戻れるかどうかが分かれ目です。水中の明るさが場所によらず同じなら、そもそも三つの制限要因を掛け合わせる意味が薄れてしまいます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(最も不適切な記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(適切) | 光も栄養塩も足りているときの上限の速さは、水温の関数として与えます。 |
| (2) | ○(適切) | 光が強すぎるとかえって増殖が落ちる現象を織り込んだ式が知られています。 |
| (3) | ○(適切) | 窒素とりんのうち最も不足したものが増殖を支配する、という考え方を用います。 |
| (4) | ×(不適切) | 挙げられた法則は、光が深さとともに指数関数的に弱まることを表すものです。一定にはなりません。 |
| (5) | ○(適切) | 上限の速さに、光と栄養塩それぞれの制限項を掛け合わせて増殖速度を求めます。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
ランバート-ベールの法則は、光が物質の層を通るとき、通った厚みに応じて一定の割合ずつ弱まっていくことを表します。水に当てはめれば、水面から一定の深さ進むごとに光は同じ割合ずつ削られ、結果として深さに対して指数関数的に減っていきます。減り方の速さを決めるのが消散係数で、濁りや植物プランクトンが多いほど大きくなり、光はより浅いところで尽きます。つまりこの法則は水深によって光が変わることそのものを述べた法則であり、水深によらず一定という結論はこの法則から出てきません。法則の名前と結論が真正面から矛盾している、自己矛盾型の肢です。
この点を外すとモデルは現実を映さなくなります。光が一定なら、表層でも底層でも同じ速さで藻類が増えることになり、明るい層に藻類が集まる分布も、濁った水域で増殖が抑えられる現象も再現できません。実際の計算では層ごとに深さに応じた明るさを求め、その明るさから光の制限項を出したうえで、栄養塩の制限項と掛け合わせます。光の制限項が層ごとに違うからこそ、水柱を鉛直に分けて解く意味があるのです。深いところまで光が届く透明な水域と、表層だけが明るい濁った水域で、増殖の起こる場所がまるで違うことも、この式が押さえています。
あわせて、二つの法則の守備範囲を混同しないことも大切です。最も不足したものが全体を決めるという考え方は、窒素とりんのように複数の栄養塩を比べる場面で使うもので、光の強さを計算する場面では使いません。逆に、深さ方向の明るさを求めるのは吸収の法則の仕事です。どちらの法則がどの制限項を担当するかを対応づけておけば、名前を入れ替えた出題にも、内容を裏返した今回のような出題にも対応できます。
覚え方
- 光は深さとともに指数関数的に減衰する。減り方の速さは濁りで決まる。
- 増殖速度=水温で決まる上限の速さ×光の制限項×栄養塩の制限項。掛け算で組み立てる。
- 最も不足した栄養塩が増殖を決める考え方は、栄養塩どうしを比べるときだけの道具。
- 光は強すぎても増殖を落とす。強光阻害を織り込んだ式が使われる。
- 法則名が出てきたら、その法則が何を主張するかまで戻って結論と突き合わせる。
理解度チェック
水中の光強度は深さに対してどのように変化し、その変化の速さは何で決まるか。
深さが増すほど指数関数的に弱まります。弱まる速さは消散係数で表され、濁りや植物プランクトンが多いほど大きくなって、光の届く層は浅くなります。
植物プランクトンの増殖速度は、どの要素をどのように組み合わせて計算するか。
水温の関数として与えた上限の速さに、光の制限項と栄養塩の制限項を掛け合わせて求めます。栄養塩の制限項は、最も不足したものが全体を決めるという考え方で選びます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月