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平成30年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問1を解説|閉鎖性水域のCODは保存物質として扱えない

平成30年度 大規模水質特論 問1は、外海との水の入れ替わりが乏しい湾や内海で、水の汚れをはかる代表的な指標がどう振る舞うかを問う正誤問題です。不適切なものを選びます。

この問題のポイント

この指標は、陸から流れ込んだ汚れの量だけで決まるものではありません。窒素やりんが豊富な湾では植物プランクトンが自ら増え、その体そのものが新しい有機物として水中に積み上がります。設問はこの点を軸に、環境基準としての位置づけ、総量規制の効き方、指標としての役割を横断的に並べています。引っかけの核心は一点で、水域の中で新たに生み出される量を無視して、薄まり方だけで濃度を追えると言い切っているところにあります。流れと拡散だけを解く計算は、水中で増えも減りもしない物質にしか当てはまりません。残りの四つは指標の性格と規制の実情をそのまま述べたもので、順に読めば引っかかりません。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(3)(不適切な記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)○(適切)植物プランクトンが増えれば、その体そのものが有機物になります。これが内部生産の正体です。
(2)○(適切)海域のA類型のCOD環境基準は2 mg/L以下です。類型と数値の組合せが合っています。
(3)×(不適切)水中で新たにつくられる以上、薄まるだけの物質としては扱えません。物理拡散だけでは分布を再現できません。
(4)○(適切)東京湾や伊勢湾は総量規制の対象水域で、流入する負荷量は減少してきています。
(5)○(適切)有機物による汚れの程度を示すものとして、海域や湖沼の環境基準に採用されています。

選択肢(3)のポイント(ここが誤り)

保存物質とは、水域に入ってから出ていくまでのあいだにつくられも壊されもしない物質のことです。塩分がその代表で、濃度が変わる理由は薄まるか濃くなるかしかありません。だから流れと拡散だけを解く計算、いわゆる物理拡散モデルで空間分布を追えます。ところがCODで測られる有機物は事情がまったく違います。富栄養化が進んだ湾では、窒素やりんを吸って植物プランクトンが盛んに増え、その細胞が有機物そのものとして水中に積み上がります。これが内部生産です。同時に、沈んだ有機物は分解されて消えていきます。生成と消失の両方が水域の内側で起きている物質を、薄まるだけの物質として計算することはできません

この取り違えが実務で何を招くかというと、負荷を減らしたのに濃度が思ったほど下がらない理由を説明できなくなる、という形で表れます。陸から入る量だけを追う計算では、湾の奥で夏に濃度が跳ね上がる現象や、水温と日射に応じた季節変動が再現できません。再現できないのはモデルの精度不足ではなく、扱う物質の性格を取り違えたことによる構造的な破綻です。だからこそ、富栄養化した水域の解析には、水の動きを解く流体力学モデルと、増殖や分解を扱う生態系モデルを結合した計算が要ります。

判別のコツは、指標の名前ではなく水域の中で量が変わるかどうかを見ることです。塩分や一部のトレーサーは変わらないので物理拡散モデルでよく、CODやクロロフィル、溶存酸素は水中の生物活動で増減するので生態系モデルが要ります。この線引きさえ持っていれば、似た文面が別の年度で出ても迷いません。

覚え方

  • 水中で増減する物質は保存物質ではない。保存物質の代表は塩分。
  • 物理拡散モデルで足りるのは、薄まるだけの物質だけ。増減があれば生態系モデルが要る。
  • 内部生産の正体は植物プランクトンの体。栄養塩を減らさないと有機物は湾内で湧き続ける。
  • 総量規制は濃度ではなく流入する量を絞る仕組み。負荷は減っても濃度の反応は鈍い。
  • 指標名で判断せず、生成と分解が水域内で起きるかで計算手法を選ぶ。

理解度チェック

Q.

富栄養化した湾のCODを、物理拡散モデルだけで計算できないのはなぜか。

植物プランクトンの増殖によって有機物が水域の内側で新たにつくられるためです。沈降後の分解による消失も同時に起きるので、薄まり方だけを追う計算では分布も季節変動も再現できません。

Q.

保存物質として扱える物質の例と、その理由を述べよ。

塩分が代表例です。水域の中で生成も分解もされないため、濃度の変化が希釈と輸送だけで決まり、流れと拡散を解く計算で空間分布を追えます。

この問題に関連する用語解説

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF