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酸で洗うのに、どうして腐食を防ぐ薬まで入れるの?
この記事の要点
洗浄助剤とは、酸洗浄のときに洗浄剤へ加えて、母材が傷むのを防ぐ薬剤のことです。
還元剤と銅イオン封鎖剤は、酸液中に溶け出すFe³⁺・Cu²⁺などの酸化性イオンによる腐食を防ぎます。
インヒビタ(腐食抑制剤)は、酸そのものによる腐食を防ぎます。防ぐ腐食が違います。
酸洗浄では、スケールを溶かすために酸を使います。ところが酸は、落としたいスケールだけでなく母材の鋼も溶かします。そこで加えるのが洗浄助剤です。
しかも、洗浄中に鋼を傷める原因は酸だけではありません。溶け出した金属イオン、液の濃度の差、残留応力と、いくつもあります。
原因が違えば手当ても違います。洗浄助剤は、何による腐食を防ぐかで分かれています。
| 防ぐ腐食 | 加えるもの |
|---|---|
| 酸化性イオンによる腐食 (Fe³⁺・Cu²⁺) |
還元剤や銅イオン封鎖剤を洗浄助剤として添加する |
| 酸そのものによる腐食 | スケールの組成や酸洗いなどの処理条件に適合したインヒビタを洗浄剤に添加する |
洗浄が進むと、スケールに含まれていた鉄や銅がイオンになって酸液の中に溶け出します。Fe³⁺(鉄イオン)やCu²⁺(銅イオン)です。
これらは酸化性イオンで、鋼を酸化させる力を持ちます。スケールの組成によっては、洗浄液中に溶出する鉄(Ⅲ)イオンや銅(Ⅱ)イオンの量に比例して鋼材が腐食されます。
そこで手当てをします。
どちらも、対象になるイオン濃度を一定値以下に保持するために加えます。
簡単に言えば、洗っているうちに湯が汚れて、その汚れが新しい傷を作る、という状態です。だから、溶け出したイオンの側にも手当てが要ります。
インヒビタは腐食抑制剤とも呼ばれ、酸そのものが母材を溶かすのを抑えます。金属の表面に薄い膜を作って、酸が直接触れないようにする働きです。
加えるときは、スケールの組成や酸洗いなどの処理条件に適合したものを選びます。どんな酸にも同じインヒビタが効くわけではありません。
還元剤・銅イオン封鎖剤とは、防いでいる腐食が違います。インヒビタは酸、還元剤と封鎖剤は溶け出したイオンです。
洗浄中の腐食には、薬品を足すだけでは防げないものもあります。
予備調査で行うことも、この対策につながります。スケールの分析および溶解試験の結果により、潤化処理・アンモニア洗浄の要否や還元剤の使用量を検討します。
混同しやすい用語の整理
還元剤・銅イオン封鎖剤は酸化性イオン(Fe³⁺・Cu²⁺)による腐食を防ぐ。インヒビタは酸そのものによる腐食を防ぐ。防ぐ腐食が違う。
濃淡電池は洗浄液の濃度差でできる。電気化学的腐食は残留応力が存在する部分や、異種金属の接触で発生する。
洗浄剤はスケールを溶かす薬品(塩酸・クエン酸など)。洗浄助剤はそこへ加えて、母材が傷むのを防ぐもの。
酸洗浄の洗浄助剤と腐食は、令和5年10月から令和8年4月まで問6で5回とも出ています。空欄を埋める形が2回、適切でないものを選ぶ形が2回、組合せを選ぶ形が1回です。
| 回・問 | 問われ方/引っかけ |
|---|---|
| 令和5年10月 問6 | 「Fe³⁺、Cu²⁺などの酸化性イオンによる腐食を防止するため、AやBを洗浄助剤として添加する」の空欄。正答は(3)=還元剤・銅イオン封鎖剤。誤りの選択肢に並ぶのは潤化剤と酸化剤で、酸化剤は還元剤の逆向き |
| 令和6年10月 問6 | 「著しい温度差による腐食を防止するため、炭酸ナトリウムを洗浄剤に添加する」とした記述=誤り。濃淡電池、残留応力と電気化学的腐食、スケールの分析と溶解試験からの還元剤の使用量の検討、インヒビタは正しい側 |
| 令和7年4月 問6 | 「異種の金属が接触する部分に生じるおそれのある電気化学的腐食を防止するため、洗浄液として無機酸を用いる」とした記述=誤り。酸化性イオンの量に比例した腐食、濃淡電池、残留応力、還元剤・銅イオン封鎖剤によるイオン濃度の保持は正しい側 |
| 令和7年10月 問6 | 令和5年10月と同じ文で、イオンの側も空欄にした形。正答は(1)=Cu²⁺・還元剤・銅イオン封鎖剤。誤りの選択肢のイオンはNi²⁺、薬剤は酸化剤・潤化剤・キレート剤 |
| 令和8年4月 問6 | 正答は(1)=A,B,C。誤りが2つで、D「無機酸は、有機酸に比べて洗浄後の金属表面の仕上がりが良く、腐食の危険性が少ない」とE「有機酸は…クエン酸が広く使用されているが、反応生成物の溶解度は小さい」。濃淡電池、酸化性イオンの量に比例した腐食、還元剤・銅イオン封鎖剤によるイオン濃度の保持は正しい側 |
正しい側で複数回出ているのは、濃淡電池(3回)、酸化性イオンの量に比例した腐食(2回)、還元剤・銅イオン封鎖剤によるイオン濃度の保持(2回)、残留応力と電気化学的腐食(2回)です。
薬剤と、それが防ぐ腐食は一組です。還元剤と銅イオン封鎖剤は溶け出したイオン、インヒビタは酸に対するものです。
還元剤と銅イオン封鎖剤は、何による腐食を防ぐか。
洗浄中に酸液へ溶け出すFe³⁺・Cu²⁺などの酸化性イオンによる腐食です。スケールの組成によっては、これらのイオンの量に比例して鋼材が腐食されます。
インヒビタは何を防いでいるか。
酸そのものが母材を溶かすことです。金属の表面に膜を作って、酸が直接触れないようにします。スケールの組成や処理条件に適合したものを選びます。
洗浄液の濃度に差があると、なぜ腐食するのか。
濃淡電池を形成するためです。同じ金属でも、触れている液の濃さが違えば電位差が生まれ、電流が流れて片方が溶けます。
還元剤の使用量は、どうやって決めるか。
スケールの分析および溶解試験の結果によります。潤化処理やアンモニア洗浄の要否も、同じ結果から検討します。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月
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