平成29年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問10を解説|ICP質量分析法の内標準物質
平成29年度 大気有害物質特論 問10は、カドミウムと鉛をICP質量分析法で定量するときに加える内標準物質を選ばせる問題です。正しいものを選びます。
この問題のポイント
ICP質量分析では、試料が霧になってプラズマへ送り込まれる量や、プラズマそのものの状態が、運転中にわずかに揺れます。目的の元素の信号だけを見ていると、この揺れが濃度の変動と区別できません。そこで、あらかじめ一定量だけ加えておいた別の元素の信号を物差しにして、比を取ることで揺れを打ち消します。この物差し役が内標準物質です。分かれ目は物差しにしてよい元素の条件で、試料の側にもともと入っている可能性がある元素は使えません。並んでいる五つのうち、その条件を満たすものは一つだけです。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(正しい記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | はんだやめっきに広く使われる金属で、排ガス側に混入している可能性があり、物差し役には向きません。 |
| (2) | ○(正しい) | 排ガス中にまず現れない元素で、この方法の内標準物質として規定されています。 |
| (3) | ×(誤り) | 鋼材や触媒に使われる金属で、試料側に含まれうるため内標準にはできません。 |
| (4) | ×(誤り) | 原子吸光法で試料の状態を整える添加剤として登場する金属ですが、この方法の内標準物質ではありません。 |
| (5) | ×(誤り) | 装置の部材にも使われる貴金属で、この方法で定められている内標準物質ではありません。 |
選択肢(2)のポイント(ここが正しい)
内標準物質は、測定の途中で起きる揺れを打ち消すための基準です。試料溶液にも検量線用の標準液にも、同じ量だけ加えておきます。そして目的元素の指示値を内標準の指示値で割った比を、濃度の物差しに使います。噴霧される量が少し減れば、目的元素の信号も内標準の信号もそろって下がるので、比を取れば影響が消えるという仕組みです。
この仕組みが成り立つには、内標準に選ぶ元素が試料の側にもともと含まれていないことが絶対の条件になります。もし含まれていれば、加えた量が試料ごとに変わってしまい、物差しの目盛りそのものが伸び縮みします。イットリウムが選ばれるのは、排ガスの中でまず出会わない元素だからです。
逆に、選択肢に並んだほかの金属はいずれも工業製品や装置に使われており、排ガス側に紛れ込む余地があります。すずははんだやめっき、モリブデンは鋼材や触媒、白金は装置の部材という具合です。パラジウムについては、原子吸光法で試料の状態を整えるために加える場面がありますが、それは内標準とは役割の違う添加です。同じ「加える金属」でも、目的が違えば選ばれる元素も違うという点を混同しないことが大切です。
覚え方
- ICP質量分析の内標準は試料にまず含まれない元素を選ぶ。排ガス中の金属分析ではイットリウム。
- 内標準の使い方は「目的元素の指示値÷内標準の指示値」。比を取って装置の揺れを打ち消す。
- 内標準は試料溶液にも標準液にも同じ量を加える。片方だけでは意味がない。
- 工業的にありふれた金属(すず・モリブデン・白金など)は内標準に使えない。
- 原子吸光法で加えるマトリックス調整用の金属は、内標準とは別の役割。
理解度チェック
ICP質量分析法で内標準物質を加えるのは何のためか。
試料の導入量やプラズマの状態の揺れを打ち消すためです。目的元素と内標準の指示値の比を取ることで、そろって変動する分が相殺されます。
内標準物質に選ばれる元素が満たすべき条件は何か。
試料にもともと含まれていないことです。含まれていると加えた量が試料ごとに変わり、基準として働かなくなります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月