平成29年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問4を解説|有機水銀を塩素で壊すときの条件(アルキル基が小さいほど手強い)
平成29年度 水質有害物質特論 問4は、炭素と水銀が直接つながった化合物を含む排水の手当てについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
炭素と水銀が直接つながった形のままでは、沈殿処理は効きません。そこでまず塩素で結合を切って無機の水銀に変え、そのうえで沈めるという段取りを踏みます。この問題は、その第一段階である塩素分解の効き目が何に左右されるかを問うています。分かれ目はアルキル基の大きさと分解のしやすさの向きが逆に置かれている点で、しかもその向きは、毒性の高さとも同じ方向を向いています。小さくて身軽なものほど壊しやすそうに感じますが、結合の強さでいえば話は逆になります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(1)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | ついている炭素の数が少ないものほど結合が強く、かえって分解しにくくなります。 |
| (2) | ○(正しい) | 酸性側では結合が切れやすく、酸を強く効かせるほど分解が進みます。 |
| (3) | ○(正しい) | 分解の速さは液性に強く左右されるため、pHは重要な操作因子です。 |
| (4) | ○(正しい) | 酸化して無機の水銀に変えたうえで、硫化物法により沈めます。 |
| (5) | ○(正しい) | 沈殿処理のあと、吸着材で残った分を押さえて仕上げます。 |
選択肢(1)のポイント(ここが誤り)
炭素と水銀の結合は、炭素側の置換基が小さいほど安定に保たれます。メチル基がついた水銀がその極端な例で、環境中でも長く分解されずに残り、生物の体内に濃縮していきます。炭素の数が少ないほど壊しやすいという向きは、実際とは逆です。鎖が長くなるほど、また芳香環がついた形になるほど、塩素による酸化で切りやすくなります。処理の難しさと毒性の高さが同じ方向に並んでいる、と結び付けて覚えると取り違えません。過去に大きな健康被害を引き起こしたのが、まさに最も切れにくい形の化合物だったという事実が、そのまま記憶の手がかりになります。
液性の効き方も押さえどころです。塩素による酸化分解は酸性側で速く進みます。次亜塩素酸は、酸性側では解離していない分子の形で存在する割合が高く、この形のほうが酸化力に優れるためです。逆にアルカリ側では解離が進み、分解が遅くなります。したがって、有機水銀の分解ではあえて酸性側に振るという、他の処理とは逆向きの操作が採られます。同じ水銀でも、無機の水銀を硫化物に変えて沈める段では酸性側を避けるので、段ごとに向きが切り替わることになります。
全体の流れは「壊す・沈める・仕上げる」の三段です。壊す段では塩素酸化で炭素と水銀を切り離し、沈める段ではpHを戻し、硫化物法によって水銀を溶けにくい形にします。それでも残る微量分は、キレート樹脂や活性炭といった吸着材で押さえます。水銀は排水基準がとくに厳しい項目なので、沈殿だけで終わらせず仕上げの吸着を置くのが標準的な組み立てです。段ごとに狙いと液性が変わるという構造でとらえておけば、条件を問う出題に強くなります。
覚え方
- アルキル基が小さいほど炭素と水銀の結合は切れにくい。メチル基の形が最も手強い。
- 毒性の高さと分解の難しさは同じ向き。長い鎖や芳香環のほうが壊しやすい。
- 塩素による酸化分解は酸性側で速い。液性は分解の効き目を決める操作因子。
- 有機水銀の処理は「壊す→沈める→仕上げる」の三段。
- 仕上げはキレート樹脂や活性炭。沈殿だけで終わらせない。
理解度チェック
有機水銀の塩素分解は、アルキル基の大きさによってどう変わるか。
アルキル基についた炭素の数が少ないものほど壊れにくく、大きいものや芳香環を持つものほど分解しやすくなります。最も切れにくいのがメチル基の形で、毒性が高く環境中に残りやすい理由でもあります。
有機水銀の処理で、塩素酸化の段だけ酸性側に振るのはなぜか。
次亜塩素酸が酸性側では解離していない分子の形で多く存在し、その形のほうが酸化力に優れるためです。分解を終えて無機の水銀にしたあとは、硫化物法のためにpHを戻します。段ごとに狙う液性が切り替わります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月