平成29年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問2を解説|錯体をつくって処理を妨げる物質(配位子かどうかで見分ける)
平成29年度 水質有害物質特論 問2は、金属を抱え込んで沈殿処理を妨げる物質を見分ける正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
アルカリで沈める処理も硫黄分で沈める処理も、金属が水中で自由に振る舞っていることを前提にしています。ところが金属を包み込む相手が水中にいると、金属はその腕の中で安定してしまい、薬品をいくら足しても沈みません。この問題は、そうした邪魔者の顔ぶれを覚えているかどうかを直接に問うています。分かれ目は単純で、五つのうち一つだけが、金属を包む腕を持たないただの塩だという点です。名前のなかに金属が入っているものは、包む側ではなく包まれる側だと考えれば、消去法に頼らず選べます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | ヒドロキシ基とカルボキシ基を併せ持ち、金属を挟み込む代表的な有機酸です。 |
| (2) | ○(正しい) | 多数の腕で金属を包み込むキレート剤の代表格で、処理阻害の筆頭に挙げられます。 |
| (3) | ○(正しい) | 二つのカルボキシ基が金属を両側から挟み、安定な五員環の錯体をつくります。 |
| (4) | ○(正しい) | 窒素の非共有電子対が金属に配位し、銅やニッケルなどと錯イオンをつくります。 |
| (5) | ×(誤り) | これは金属を包む腕を持たない無機の塩で、抱え込む側にはなれません。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
金属を抱え込むには、金属に向かって電子対を差し出せる原子が必要です。その役目を果たすのは主に酸素・窒素・硫黄で、これらを持つ有機酸やアミン、含硫黄化合物が配位子になります。硝酸マグネシウムはマグネシウムイオンと硝酸イオンの組み合わせで、硝酸イオンは金属に配位する力がきわめて弱く、通常は配位子として数えません。むしろこの化合物のなかで金属の位置にいるのはマグネシウムのほうで、抱え込む側ではなく抱え込まれる側です。処理の妨げになる面々に数えるのは筋が通りません。
逆に、処理現場で実際に手を焼く顔ぶれははっきりしています。多座の腕を持つキレート剤、複数のカルボキシ基やヒドロキシ基を持つ有機酸、そして窒素で配位するアンモニアです。これらはめっき液、洗浄剤、写真の処理液、食品や医薬の工程などから排水に紛れ込みます。いったん錯体ができてしまうと、pHを上げても硫黄分を足しても金属は沈まず、処理水は透明なのに濃度が下がらないという厄介な状態になります。沈殿が見えないので、運転側は薬品不足と勘違いして注入量を増やしがちですが、原因はそこにありません。
対処は二方向です。一つは配位子そのものを壊す道で、酸化剤や加熱による分解で腕を切ります。もう一つは金属を入れ替える道で、鉄塩やカルシウム塩を加えて配位子の相手を無害な金属に移し、押し出された重金属は水酸化物に変えて沈めます。どちらを選ぶにせよ、まず錯体の存在に気づくことが出発点です。この問題は、その気づきに必要な顔ぶれの整理を求めています。
覚え方
- 抱え込むのは配位子。金属の名を冠した塩は邪魔者ではない。
- 配位子の目印は、金属に電子対を差し出せる酸素・窒素・硫黄。
- キレート剤の代表はEDTA。有機酸では酒石酸・しゅう酸・くえん酸。無機ではアンモニアとシアン。
- 錯体になった金属は、アルカリを足しても硫黄分を足しても沈まない。
- 対処は「腕を壊す」か「金属を入れ替える」の二方向。
理解度チェック
ある物質が重金属処理を妨げるかどうかは、何を見て判断するか。
金属に向かって電子対を差し出せる原子(酸素・窒素・硫黄など)を持っているかを見ます。これらを持つ有機酸やアミンは配位子として金属を抱え込みますが、金属イオンと単純な酸の陰イオンからなる無機塩は配位子にならず、処理を妨げません。
錯体を含む排水で、薬品を増やしても濃度が下がらないのはなぜか。
金属が配位子の腕に囲まれて安定しているため、水酸化物イオンや硫化物イオンが金属に近づけないからです。薬品を増やしても沈殿の相手役として割り込めないので、配位子を分解するか、置換法で金属を入れ替える前処理が必要になります。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月