平成29年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問1を解説|夏の成層が底層への酸素供給を断つ
平成29年度 大規模水質特論 問1は、海の水に溶けている酸素がどこから入り、何に食われるかを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
酸素の出入りは、増やす側と減らす側に分けて整理すると一気に見通しがよくなります。増やす側は、光の届く層での光合成と、水面をはさんだ大気とのやり取りの二つだけです。減らす側は幅広く、生き物の呼吸、沈んだ有機物を分解する細菌のはたらき、そしてアンモニアを酸化する細菌の反応が入ります。設問はこの両側から肢を並べたうえで、季節ごとの水の動きだけを逆向きに書いています。引っかけの核心は一点で、暖かい季節に鉛直方向の混ざりが強まると述べているところです。日射で表層が暖められる時期は、軽い水が上、重い水が下という安定した重なりができ、上下は混ざりにくくなります。この一点さえ押さえれば、残りは酸素の収支をたどるだけで判断できます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 植物プランクトンも生き物なので、光合成で酸素をつくる一方、自らも酸素を使って呼吸しています。 |
| (2) | ×(誤り) | 暖かい時期は表層が軽くなって重なりが安定し、上下は混ざりにくくなります。向きが逆です。 |
| (3) | ○(正しい) | 気体の溶け込む限界量は温度と塩の濃さで決まるため、この二つが分かれば数値として出せます。 |
| (4) | ○(正しい) | 硝化細菌がアンモニアを酸化して硝酸へ変える反応は、酸素を大量に使う反応です。 |
| (5) | ○(正しい) | 水面でのやり取りは双方向で、足りなければ入り、多すぎれば逃げていきます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
まず、水の重さは何で決まるかを思い出してください。海水は冷たいほど、また塩が濃いほど重くなります。日射が強い時期には表層だけが先に暖められるので、上に軽い水、下に重い水という並びができあがります。これは重い方が下にある安定した並びなので、風が吹いた程度では崩れません。上下が混ざりにくくなるのであって、活発になるのではありません。この重なりを密度成層と呼び、暖かい季節の内湾で毎年のように発達します。
成層ができると何が起きるか。底の方の水は、大気からも光合成からも切り離されます。酸素が入ってくる道が両方とも断たれるわけです。ところが消費の方は止まりません。上から沈んできた植物プランクトンの死骸や有機物が底で分解され、その過程で酸素がどんどん使われます。海底の泥そのものも酸素を吸います。供給ゼロに近い状態で消費だけが続けば、結果は一つしかありません。底層の酸素が枯れます。これが貧酸素水塊です。
逆に、水温が下がる季節には表層の水が冷えて重くなり、自分から沈み込みます。これが引き金となって上下がぐるりと入れ替わり、底層にも酸素が届いて回復します。つまり混ざるのは寒い季節、切れるのは暖かい季節という対応です。試験でこの手の肢に出会ったら、季節と混合の向きが正しく組み合わさっているかだけを確認すれば足ります。なお、貧酸素になった底層水が風の作用で表層へ湧き上がると、硫化物が酸化されて水が濁って見える現象につながります。富栄養化した内湾で問題になる一連の出来事は、すべてこの成層から始まっています。
覚え方
- 暖かい季節は上が軽くなって上下が切れる。混ざるのは寒い季節。
- 底が酸欠になる理由は二つ重なる。供給が断たれる+分解で使われ続ける。
- 酸素を増やすのは光合成と大気とのやり取りだけ。減らす側は呼吸・分解・硝化と幅広い。
- 大気とのやり取りは一方通行ではない。多すぎれば逃げる。
- 溶け込む限界量は温度が高いほど、塩が濃いほど小さい。
理解度チェック
暖かい季節の内湾で、底の方の水が酸欠になりやすいのはなぜですか。
表層だけが暖まって軽くなり、上下の入れ替わりが止まるためです。底層は大気からも光合成からも切り離される一方、沈んできた有機物の分解で酸素が使われ続けるので、収支が一方的に減る側へ傾きます。
生物の呼吸のほかに、水中の酸素を大きく減らす反応を一つ挙げてください。
硝化です。硝化細菌がアンモニアを亜硝酸、さらに硝酸へと酸化する過程で酸素を大量に使います。有機物の分解と並ぶ、大きな消費側の経路です。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成29年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月