構造設計に関すること

地震にまつわる伝記 第一話 なゐ(い)ゆる国

1.大鯰と大黒天 震災と復興

1885年10月2日、江戸で大地震が発生します。M7クラスの激震。南関東直下地震といわれています。当時流行った瓦絵に、武神タケミカヅチが十握(とつか)の剣を持って、大鯰(おおなまず)の「揺れ」から人々を守る様が描かれています。

一方で、大黒様が大判小判を天からばら撒いています。それをかき集める町民の姿が、震災と復興に沸く世相を表しているのです。

 

2.始まりは神無月の隙に・・・

風が吹けば桶屋が儲かる。地震が起これば瓦絵が売れるみたい。安政の大地震にまつわる風刺や伝承は数多く残されています。

10月は一般的に神無月。日本全土の神々が、出雲大社へ集まり縁結びの話し合いや交易、酒や肴を酌み交わすのです。普段タケミカヅチは、「要石」という大きな霊石(れいせき)で大鯰が「揺れないように」抑えていました。

しかし、10月は神無月です。タケミカヅチも出雲へ出向していました。変わりに大鯰を抑えていたのはえびす達。力のないえびす達では抑えきれません。たちまち大鯰は暴れ回り、安政の大地震が起こってしまった、というわけです。

これを聞いてすぐに戻ったタケミカヅチは、十握(とつか)の剣で大鯰を抑えました。

現実のストーリーはこれほどハッピーエンドではありません。凄まじい揺れは家屋を倒壊させ火事が起こり、圧死や焼死により多くの命が失われました。

 

3.安政の大地震と鯰

ところで、地震の象徴が鯰とされたのは安政大地震から。釣り人が鯰を釣ろうとすると、普段おとなしいはずが暴れまわって全く釣れなかった、という逸話によるみたい。

 

4.鯰よりも昔にいた? 地震神(なゐのかみ)

実は鯰説のさらに昔『日本書紀』の「推古天皇紀」に

推古天皇7年(599年)夏に大和地方を中心とする大地震があり、その後、諸国に「地震神」(なゐのかみ)を祀らせた
とあります。

地震鯰は新しい伝承。最も古い説は「なゐのかみ」が地震を起していたとのこと。「なゐ」とは「地震」を意味し、「なゐ揺る」が「地震によって揺れる」という意味です。1400余り経った今も、わが国は「なゐゆる」に悩まされています。

大きく変わった点は、地震に対して畏怖の念を抱かなくなったことです。今では、地震で人が死ぬことが昔話であったかのようにも感じている人も多いです。それは、日本が科学技術を発展させ建物は木造から鉄骨造、鉄筋コンクリート造と進化したからです。そして、死者率や火災での死亡率を劇的に減らすに至りました。

 

5.想定を超える被害

人は万能ではありません。東日本大震災によって「想定しえなかった津波」のパワーに、軽い木造住宅や鉄骨造は流されました。流されはしなかった鉄筋コンクリート造も、流れた漂流物の衝撃で再利用できない被害を受けました。

私たちの技術は、常に過去の自然現象と戦える準備をします。しかし、限られた範囲で科学技術が自然現象を超えるとは絶対考えてはいけません。

特に技術が成熟しきって生まれた私達の世代は畏怖や祈りが存在しません。人々には「慢心」が住んでいることでしょう。この「慢心」が危険だと考えて欲しい。

技術は全ての可能性を網羅できていません。『絶対大丈夫』な建物は存在しないのです。

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