本の紹介

【書評】住まいを守る耐震性入門、を読んで

住宅と言えば一般的に「木造住宅」のことを指す。木は何とも使い勝手が悪い材料で、構造計算に上手く乗ってこない。

理由は、木が生きているから。少し、構造的に言えば異方性あり、乾燥・収縮や水分の吸収・膨張を繰り返すため。

要は難しい材料なのだ。構造計算が上手くいかないから構造設計者の中でも木造設計に暗い人はいくらでもいる。それに木造住宅は、構造設計者の関与が不要ということもあり、積極的に近づかなかった分野だ。

しかし、考えてみれば最も普及している建物「住宅」で、建物の安全性を守る構造設計者が関与しない、というのは滑稽じゃないか。

そういう僕も、これまでRC造やS造、SRC造の設計しかたずさわったことが無い。せめて一般人以上の知識は身に付けたいから、この本を手に取ったのだ。

 

耐震性入門と書いているだけあって、内容は初学者向けだ。それでも一般の方が理解しようと思えばやや大変だろう。

むしろ意匠設計者や僕みたいなRC、S造しか構造設計をやってこなかった若人にも良い本だ。

構造屋さんが監修していることもあり、意匠屋さんが書いた耐震本と比べるとしっかりした内容だ。例えば、柱の背割りは見た目に反して耐力に全く影響ないことを、断面係数から示している。

 

壁倍率と床倍率のこと

他には壁倍率や床倍率のことも。壁倍率が品確法で定義されている件は僕も初めて知った。壁倍率とは、1mの壁長さに対して荷重を加えたとき200kgの耐力を示す変形角が1/120ときを表す。

特に木壁は、壁自体の耐力は強いのだが、せん断変形すると釘が引張力を受けて抜けてしまう。だから木の耐震壁は釘のピッチや強度、埋め込み長さで決定されるのだ。

大壁は柱や梁の外側に取り付けるから、釘も打ちやすいし耐力も高い。真壁は柱と梁の枠内に壁を納める訳だから釘も打ちにくい。そんなことも頭に入った。

また、工務店さんや意匠屋さんの中には壁倍率だけを重要視しているが、床倍率が重要だという話も書いてある。要するに、「剛床」が無ければ力が伝わらない、と言うことだ。壁倍率と床倍率は同程度にすることが原則だ。

 

特に、吹き抜けや小屋組みは注意する。和小屋は束を建てて組んでいるだけだから横力に対して強くない。洋小屋もトラスでない方向は変形する。

小屋組は変形しやすいから、小屋組みにも2割くらい壁を設けると下階に力が伝達できるそうだ。

 

通し柱は案外弱い。

筆者は、通し柱は案外弱い、と言う点にも言及している。隅柱は通し柱にすることが普通だが、通し柱が強いからという理由ではない。

地震時、外端の柱には押し引きの軸力が作用する。管柱だと、この引張力で抜けてしまう恐れがあるのだ。

通し柱は切り欠いて梁を接合するのだから、柱の断面欠損となる。金物を使えば、管柱が設計しやすい、という意見もある。

以上のような木構造の基礎について勉強できる。コンパクトに内容が纏めてある良書だ。

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