本の紹介

【書評】乱読のセレンディピティ、を読んで。

何ともしゃれた題名だ。この本を手にとったときそう思った。口に出したときの語感がたまらない。

「らんどくのせれんでぃぴてぃ」。いい感じだ。

読み進めると筆者が「外山滋比古」だと気づいた。あの、大ベストセラー思考の整理学の著書である。

顔を知ると読書の価値が下がる。

ところで、彼は自著を知り合いには見てもらいたくないらしい。自分が書いた文書が恥ずかしい・・・という他にも理由がある。それは著者の顔が分かると、途端に読書の価値が下がる、というのだ。

最近は本のカバーを開けば著者の顔写真が写る。それが良くない。簡単に言えば、本に先入観を与える。経歴なんて書かれた日には大変だ。

東京大学教授の本、というだけでありがたい気がする。それでは、本当に良い本が、良い読書ができない。

 

思いがけない価値を発見。セレンディピティ

ところで皆さんが気になっているのはセレンディピティの意味か、だと思う。セレンディピティとは、「思いがけない発見」ということ。

では、乱読との関係はどうか。筆者の考えはこうだ。

 

・乱読(沢山の本をところかまわず読むこと。)をすれば、思いがけない発見に出会える。専門バカになるな。

 

ということだ。専門家にとって、本といえば専門書だろう。規準書や工学本など読み漁る学生、社会人は多い。この行為を食事で例えるなら、偏食家ということになる。

偏食するより、食事はバランス重視が圧倒的に健康に良い。

乱読することは、まさにバランス重視の食事を目指すようなものだ。そして乱読は専門バカにはならず思いがけない発見をする。

例えばガリバー旅行記がある。この本は児童向けの絵本だと思っている人が多いだろう。しかし元は、当時の政治に不満をもった人物の風刺なのだそう。

それが月日を経て、児童絵本として人気を博した。まさに思いがけない発見。セレンディピティである。

 

建築業界にも同じことがいえる。毎日毎日、工学書や建築本を読み漁る。何か新しい発見、新しい建築を目指そうと鼻息荒くする。が、何も見つからない。

当然である。自分の親しい業界知識が増えるだけだ。

知識は増えるだろうが、知恵はつかないのだ。一方、乱読は専門外の知識をとりいれる。専門外の知識だから考える。今持つ知識と専門外の知識は、思わぬ結びつきをみせる。そしてある時、セレンディピティが生まれる。

 

筆者からの免罪符。

ところで筆者によれば、乱読をする際、本は最後まで読まなくてもいいし熟読する必要はない、という。

昔は本自体が少なかったから精読する必要があったが、今は本の数が多い。わざわざ1つの本に執着する必要もないわけだ(捨ててもいい、とさえ言っている)。

それを読んで僕は少し安心した。筆者からの免罪符を得た。とりあえず今日のところは、その免罪符をもっていつもの熟読を辞めてみよう。

筆者に申し訳ないと思いつつ、本を流し読みする。なるほど。流し読みも中々良いではないか。

それに自信がもてた。これからも専門にこだわりを持つ必要はない。僕は偏食家になりたくない。バランス重視の食事で健康的に過ごしたいものだ。

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