労働のこと

設計業務に『生産性』っていう言葉あるのかな(笑)

『生産性』という言葉、よく聞きます。生産性を上げろとか、生産性をよくしましょう、とかね。生産性にも種類がありますが、労働における生産性は、効率の話と思って差し支えないです。要は、短い作業時間で、いかに成果を上げたか?ということですね。

生産性の高い人は沢山の仕事ができます。一方、生産性の低い人は仕事を多くこなせません。前者は、本来インセンティブを多めに会社側から支払っても良いはずです。が、日本の会社は、両者に給料の差がつきません。特に設計業務は、生産性の概念が曖昧で評価がつけにくいことも問題の1つ。

ですから、生産性の高い人ほど、実は、個人の生産性が下がってしまう矛盾が生じます(時給が下がる)。一方、生産性の低い人は、残業代も手に入って、逆に給料が高くなってしまいます。

以上の問題は、日本企業全体の悪習として問題視されています。ちなみに弊社では、ある役職以上になると残業代が発生しません。ですから、遅くまで残るよりも作業の効率を上げた方が得です。

弊社の話はさておき・・・、設計に『生産性』という概念はあるのだろうか?と常々考えています。そこには、設計特有の問題点があるのです。

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手戻りが多く、整合性の確認がアナログであること。

設計業務は『手戻り(修正)』が多いことが指摘されています。例えば、意匠図は普通の建物でも50枚くらいは描きます。その枚数1枚1枚が、相互関係していて、例えば平面図に書いた寸法と平面詳細図に書く寸法は一致しますし、立面や断面図、矩計図は互いに関係しているのです。

要するに、1項目の修正ヶ所が飛び火して、関係箇所全ての図面を修正する必要があります。この作業を行うためには、図面を洗い出す必要があります。しかし、どこに何が描いてあるのか?という情報が、図面を描く担当者しか全体像を知り得ません。しかも、関係箇所を探す方法が『目視』であって、とても時間がかかる上に、修正漏れもおきます。

構造設計をしている方であれば、伏図、軸組図と計算書の部材符号、鉄筋の配置等、いちいち目視で整合性を確認しているでしょう。1つの部材を修正するにしても、伏・軸・計算書と3つの別データを直す必要があり、何らかの漏れが発生しやすいことは、ご存知の通りです。

この、とても非合理的な作業が、設計業務の生産性を著しく落としている要因の1つだと、僕は考えています。ちなみに、これはBIMの導入により、解決できるかも?という期待もあるのですが(これは、また別の機会に)。

 

『設計には終わりがない、締切が、設計の終わる時だ』という思想。

設計は生き物、と比喩で言われます。常に変化し続けるものだからです。そんな設計の終わりは、『締切』が近づいたとき。ですから、設計は時間いっぱいまで業務を行います。

この思想が、そもそも生産性を下げているのです。

いや、この思想がある限り、『設計に生産性は無い』と認めているようなものでしょう。生産性とは少ないインプットで最大限のアウトプットを生産することです。設計業務におけるインプットとは、まさに『時間』です。アウトプットは『図面』。少ない時間で図面を描くことにより、生産性が高まったと言えるのです。

事務所の所員さんたちは、毎日夜遅くまで仕事をしています。彼らは、精一杯頑張っています。しかし、それは生産性の高い仕事とは言えません。もちろん、『所員のせい』ではないのですが・・・。建築設計界、全体で取り組んで行くべき事案だと思います。

 

生産年齢人口は減少し、労働時間は益々増える。

厚生労働省の調査によると、2010年の生産年齢人口はおよそ64%くらいです。生産年齢人口とは、ざっくり言えば『働き手』ということです。要は、元気に働く人口のこと。それが、2030年になれば、高齢者増加と人口減少が相まって、54%程度まで落ち込むのです。

参考URL http://www.recruit-ms.co.jp/research/2030/report/trend1.html

どういうことか。簡単に言うと、今の社会インフラや、いわゆる『豊かさ』を維持するためには、今の64÷54倍頑張れよってこと。

64/54=1.2程度なので、あなたは今の労働時間の2割増頑張んないと、生産性を維持できないのです。もちろん、生産性を高めようという議論があれば、正規の労働時間内で2割分を圧縮して作業できるかも。しかし、そのためには設計業務の根本を見直さないとダメです。無駄な作業が多すぎませんか?非効率的な修正作業のために、2割増しで労働時間を長くする?

そんなの嫌でしょ?

かと言って、個人の生産性を高める努力をすると、最初の話に逆戻り。時給が下がって、逆効果かもしれません。必要なことは、大胆なブレイクスルーの存在。BIMや3Dプリンター等の技術革新だと思っています。だから、積極的に応援しましょう。

ま、僕は来年度でこの業界居ないから関係無いけどね!皆さんもっともっと、文句言わないとヤバイですよ~。

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